悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「大丈夫か、ユーリ?」
「え、ええ。大丈夫……」

 顔も耳も首も全身が火照っているのがわかる。こんなに直球で真摯な告白なんてされたことない。いかに今まで蔑ろにされてきたのか、よーくわかった。でもそんな過去を思い出したおかげで、少しだけ落ち着きを取り戻す。

「はあ、おかげで自分を取り戻せたわ」
「うん? どこか痛めたか?」
「いいえ、大丈夫よ。それよりほら、情報を集めましょう」
「そうだな、それじゃあ、まずは——」

 いまだに早鐘を打つような心臓から無理やり意識を逸らして、私は帝都の街をフレッドと歩いた。

 しばらく歩いて、フレッドがふと足を止める。雑貨屋の前だったので、なにか欲しい物があるのかと思ったけれど、その割には険しい顔をしていた。

「フレッド、どうしたの? お店に入らないの?」
「ユーリ、振り向かないで聞いてくれ。ガラス越しにクリストファーが見える」
「……っ!!」

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