悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
「それが……どうやらクリストファー殿下は、帝国へ行ったまま行方不明になっているようなのです。王室からは帝国へ視察へ行ったものの、病に冒され王太子の継続が困難になったと発表しておりますが嘘ですわね」
「そう……ですか」
「でも心配いりませんわ。密かに近衛騎士たちも帝国で捜索をしておりますもの」

 後味の悪い気分でレイチェル様の話を聞いていた。チラリとリンクに視線を向けるけれど、首をわずかに横に振るだけだった。リンクはちゃんとフレッドの指示通りにしたのだろう。

 その後、クリストファー殿下はどこへ行ってしまったのか。さすがにバスティア王国へ戻ってきていると思っていた。自業自得だとは思うけれど、死んでほしいとまでは思っていない。

「ユーリ、大丈夫だ。あのタイプはしぶといから。きっと殺しても死なないぞ」
「そうかしら……そうだといいのだけど」
「ああ、きっと大丈夫だ」

 私とフレッドの会話を聞いていたレイチェル様が、ワクワクとした表情で胸の前で両手を合わせた。

< 146 / 224 >

この作品をシェア

pagetop