悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
     * * *



 俺は聖剣を手にしたまま、ジッと隠れ家の窓から外を眺めていた。ユーリが帝都の街へ繰り出してから、もう二時間が過ぎた。

 昼を過ぎて軽く食事をしたものの、うまく飲み込めない。ミカも食欲がないようで、半分ほど残していた。ユーリには作戦の一環でリンクを護衛代わりにつけている。なにかあっても逃げ出すくらいはできるはずだ。そう思っているのに、不安が押し寄せてくる。

 なにも連絡がないまま、隠れ家の部屋では時計の針だけが静かに音を立てていた。それからさらに一時間が過ぎた頃、やっと待ち望んだ知らせが入る。
 ミカの影であるマリサが、念話で情報が入ってきたと声を上げた。

「アルフレッド様、皇帝陛下の影から連絡が来ました。万事うまく進んでいます。ご準備を」
「そうか……では皇城に戻る。ミカ、俺たちが戻らなければ、その時は頼むぞ」
「ふたりとも戻ってくると信じてます。お兄様、お気を付けて……!」
「任せろ」

 そうして俺は作戦通りに皇城へと向かった。
 逸る気持ちを全面に出せば、俺がユーリの指名手配と解きたいのだと思わせられる。それはこちらにとっても都合がよかった。

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