悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 フレッドが私を大切にしていたのは、イリス様に会うまでの繋ぎで、護衛対象だったからだと自分に言い聞かせていた。

 決して自惚れて勘違いしないように。
 もうこれ以上傷つかないように。

「なるほど、わかった」

 フレッドが私をそっと抱きしめた。その温もりに泣きそうになる。

 そしてほんの少し身体を離して、至近距離で真っ直ぐに見つめられた。

「俺はユーリを愛してる」
「……っ!」

 サファイアブルーの瞳に宿る炎が、私を求めるように揺らめいている。
 それはいつからだったのか、その瞳の奥に秘めた激情からずっと目を逸らしていた。

「ユーリのためならどんなことでもするし、ユーリが二度と傷つかないように守る」
「…………」

 真摯な言葉は私の心に染み込んでいく。
 もう目を逸らさなくてもいいのだろうか?

「俺にはユーリしかいない」
「フレッド……」

 もう信じてもいいのだろうか?

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