悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 それからは特に問題もなく、ゆったりとした時間を過ごしていた。
 あれは大雨が降った翌日のことだった。朝方まで降り続いた雨が草木を濡らしているが、青空が広がり洗濯をしようとした時だ。

 珍しくノックの音が聞こえてきた。ユーリが家にいる以上、警戒は怠らない。扉を開けずに声をかける。

「はい、どちら様ですか?」
「私だ! クリストファーだ! ユーリエスがここにいるだろう!? ユーリエスを出せ!!」

 なぜ、クリストファー殿下がここに……?

 本当はこのまま追い返したかったが、今の俺はユーリの護衛でしかない。追い返すのか応対するのか、決めるのはユーリだ。仕方なく俺はユーリに声をかけた。

「ユーリ様、目的は不明ですが元婚約者のクリストファー殿下がお見えになってます」
「え!? どうして今頃……?」

 ユーリは驚いていたが、結局応対することに決めた。それなら俺はクリストファーがユーリに危害を加えないように、見張るしかない。ユーリの隣に立ち、クリストファーを正面から睨みつける。

 だがクリストファーの話す内容は、俺の神経を逆撫でした。今さらユーリを婚約者にしたいなどと、よく言えるものだ。散々ユーリを蔑ろにしておいて、自分が廃太子されるのが嫌で迫っているだけではないか。

< 81 / 224 >

この作品をシェア

pagetop