推しがいるのはナイショです!
「課長が優しいのは誰にでもでしょう?」
「いーや、絶対私に話しかけるのと違う」
 もう一度席に座りなおすと、テーブルの上に置きっぱなしのスマホが目に入った。

 返信……どうしよう。
 スマホを気にしている私に、留美が言った。

「もしかして、チケットとれたとか?」
「う。まだ」
 FC先行から始まって、あちこちでチケット申し込んだけど見事に全落ち。
 ラグバは年に一度、それも一日しかコンサートを開かないから、当然チケットの倍率はすごいことになってる。

「あとは、当日券が出ることを祈るのみ……」
「会えないアイドルより、目の前の課長よ?」
「本当に、課長はそんなんじゃないんだってば」
 私は、スマホを持ち上げる。

 うん。課長のことは憧れているけれど、今はまだタカヤを好きでいたい。
 私はスマホを手にとると、『了解』とだけ、返事を返した。

  ☆
 
「遅い」
 奥まって見つけにくいところに、久遠は座っていた。
 一度会っただけの人だから覚えているか不安だったけど、案外あっさりとみつけられた。

 その顔を見ていて、ふと、既視感を覚える。
 誰かに、似てる……誰だっけ。
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