推しがいるのはナイショです!
「はあ? あそこでカツヤが謝らなかったら、絶対イチヤじゃなくてタカヤが怒るって」
「そんなことないわよ! だって相手はタカヤよ? タカヤが怒ってるなんて想像できない」
 私と久遠は、ちょっと駅から外れたオープンカフェで、コンサートのMCで話されたネタについて喧々囂々と語り合って(?)いた。

 MVを借りてから1週間が過ぎた。借りたMVを返すから。そう言って、今日は私が久遠を呼び出した。

 久遠に会うのが楽しみじゃなかった、と言ったら嘘になる。
 この間会った時も、人がラーメン食べるのを興味深々で見ていたし、ラグバの話もめっちゃ盛り上がったし。
 何より、口は悪いけれど、一緒にいて嫌な思いをしなかった。むしろ、楽しかった。
 もっと話したい、って思ってしまった。こんな風に思うの、おかしいかな。

 今はまだ、日曜の午前中。だから今日は、出社の服装じゃない。眼鏡もかけてないし、化粧もナチュラル。少しくせのある髪も伸ばしたままだ。人と会う時になにを着ようなんて悩んだの、久しぶり。
 ドキドキしながら待ち合わせ場所についた私の姿を見て久遠は、ちょっと目を丸くしてから、『やっぱりかわいいじゃん』と笑った。

 それが恥ずかしくて久遠につっかかって、冒頭のような喧嘩腰の会話になってしまった。
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