推しがいるのはナイショです!
 久遠は、横を向いたままだ。
「そう言ったじゃん」
 えー、だってそんなの信じるわけないじゃん。そりゃ、似ているとは言ったし本人だって言われたけど……普通は冗談だと思うじゃない!!

 私は、思い立ってテーブル越しに手を伸ばすと、久遠の長い前髪を片手であげた。久遠はうるさげにこちらを向いたけど、私の手を振り払うことはしなかった。
 現れた顔は。
「うわ……クウヤだ……」
 しかもすさまじく柄の悪い。めずらしいもの見ちゃった。

 呆然とする私に久遠は短く言った。
「で?」
「で、って?」
 久遠が何を聞いているかわからずに、オウム返しに聞く。

「会いたかったんだろ? タカヤに」
 言われて気づいた。
「私!? 会っちゃったんだ、タカヤに!! 嘘―!!」
「反応が遅いよ」
「だってだってだって、あんなの一瞬のことで脳の処理が追い付かないわよ!」
 今、何が起こったんだろう。
< 44 / 75 >

この作品をシェア

pagetop