推しがいるのはナイショです!
「また見に来いよ。お前のために、俺、歌うから」
「でも、チケット運、みんな使い切っちゃったあ」
「ばか。メンバーには、ちゃんとチケット枠あるんだよ」
 は? 初耳だよ、それ!
 私は、き、と久遠を見上げる。

「そんなものあるなら、とっとと出しなさいよ!」
「最後の抽選もはずれたら出そうと思ったよ! お前が自力でチケット当てちまったんだろうが!」
 口をへの字に曲げた私を、久遠は上から見下ろした。

「次は、ちゃんと俺に会いに来いよ? 残業禁止」
「……チケット、くれる?」
「はずれたらな」
「なら、が、がんばる」
「よし」
 そういうと、久遠は体を折って顔を近づけてきた。少しだけ首を傾けたその角度は……ええええっ!?

 私はあわてて体をひく。がたんと扉に背中があたった。
「おい?」
 久遠が不満そうな顔をした。
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