転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
一足先に食事を終わらせて部屋に戻った。
ベッドにポスンと横になり、腕を額の上に乗せて目を閉じる。

あの日、王都のギャラリーでアスター先生に会ってアリストロ家に滞在する話は聞いていた。
そして、アスター先生の目的は。

『クレアと婚約する』

聞いた瞬間、ああ、ついに……と思ってしまった。

『学園の臨時講師の期間が終わる頃に、クレアとアリストロ伯爵には伝えるつもりだ。それまでクレアに私のことをもっと知ってもらおうと思っている』

先生の臨時講師期間は約半年。
まだ先だと少しホッとしたが、クレアが了承したら……。

アスター先生は大人だ。
そして、アリストロ伯爵が大切に育てた画家でもある。
婚約者として歓迎されるだろう。

僕だってクレアの幼馴染みとして近くにいたのに、何でこんなに怖がっているんだ。
あんなに気持ちを伝えようと決めていたはずなのに。
負けないと思ったはずなのに!!

……クレアに近づけたと思ったのに。

手紙の人を目の前にして、どんな人か分かると怖じ気づくなんて。

「バカだ……」

目を開けて、ムクリとベッドから起き上がる。

「伝えよう」

たとえクレアがアスター先生との婚約を受け入れるつもりでも、そして僕達が今までのような幼馴染みに戻れなくなったとしても。

コンコン!

「ルカ、大丈夫?」

ルイが心配して部屋に来てくれた。
ベッドに座り、声を掛けてくれる優しい兄だ。

「うん。心配かけてごめん」

「いや…」

「僕、クレアに伝えるよ。どんな結果になろうとも…。クレアがここに着いたら」

「……そうか。頑張れ!」

「うん。ありがとう」

僕はルイと微笑み合った。

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