転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
僕が馬車に乗り込むとすぐに出発した。
急いで走り揺れている馬車の中で、混乱する頭を落ち着かせようとした。
どういうこと?何が起きているんだ?
顎に手を添えて考える。

不安がさらに大きくなる。
クレアが隣国に?
……もう会えなくなる?

アスター先生の本当の目的?

僕はゾッとした。

アスター先生のあのクレアへの執着ぶり。
少し普通じゃないかもしれない……。
常にクレアを見ていた。

今すぐに連れて行っても不思議ではない。
邪魔だと思っている僕がいない時に。

そして、画家として成功しているアスター先生ならどこの土地でもすぐに暮らしていけるだろう。

クレアはアスター先生のプロポーズを受けたということ?
……いや、頷いていなくてもアスター先生なら連れて行くかもしれない。

それでクレアは本当に幸せになれるのか!?

ふたりが愛し合っているのなら幸せになるだろう。
でもそうじゃなければ?

早く!!早く着いてくれ!!
王都までは約半日。急いでくれているから多少時間が短縮されても着くのは夕方……。
間に合うのか!?
僕は両手を強く握りしめ、足元を睨みつけていた。

王都で広まっている噂も…。
何でそんなことに!!

領地の屋敷へと向かっている時は馬車の旅ものんびりしていいと思っていたけど、こんな時は前世を知っているだけにこの距離がもどかしい!!

気が狂いそうな時間を過ごし、景色はやっと見慣れた街並みになってきた。
クスフォード家の門の前で執事のマシューがウロウロとしているのが見えた!

僕は窓を開けて叫ぶ!

「マシュー!!」

「ルカ様!!クレア様は今、王都の公園にいらっしゃいます!」

「ッ!分かった!ありがとう!!」

御者のチャーリーもそのまま向かってくれた。
ここから王都の公園までは近い。
あと少し!!

すると、まだ公園には着いていないのに馬車が速度を落として止まった。

「ルカ様!この先で馬車の脱輪があったようで、この先に進めなくなっています!申し訳ございません!」

「いや、ここまでありがとう。走って行くよ!!」

馬車を降りて公園に向かって走る!

王都の街の人達を避けながら、急いで走る僕を見て驚いている人もいる。


『あの方はルイ様かルカ様ではなくて?』
『まぁ!本当だわ!』
『そういえば、あの噂はお聞きになりまして?』


この時間帯は人通りがまだ多い。
ぶつからないように走る!

クレア!もうすぐだ!
早く君に会いたい!!

まだ行かないでくれ!!


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