転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~

「おおー。これはまた、レトロというか、新しいというか…」

大きな建物の中で周りを見回して澪音が言った。

今日は澪音が一足先に隣国に行く日だ。
皆で見送りに来ている。
王都に新しく完成した『駅』に!

たくさんの人が物珍しそうに、そして楽しそうに行き交う駅の構内を歩いていると声を掛けられた。

「ルカ様!」

「あ、こんにちは。お体は変わりはありませんか?」

「はい。あの時は本当にお世話になりました」

「お元気そうで良かったです。マクラナ伯爵」

僕が話をしている人は、避暑地から王都の公園まで急いで向かっていた時に、公園の近くで胸を押さえて苦しそうにしていた人だ。

あの時はすぐに戻るつもりでひとりで散歩をしていたら、発作が急に起きてしまったそうだ。
マクラナ伯爵はしばらく病院に入院していて、退院後にクスフォード家に挨拶に来てくださっている。
なんとリエッタ様のお父様だそうだ。ローラ様といい、なんだか縁があるようだ。

「ルカ様が私を病院へと運んでくださらなければと思うと、今でも恐ろしく思います。ありがとうございました」

「い、いえ、そのことはもう…」

「そして、この国初の『汽車』の完成も遅れてしまっていたと思います」

王都の流行りを生み出すと言われているマクラナ伯爵。
小さな頃から噂は聞いていたけど、あの時の人がマクラナ伯爵だったとは。



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