転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
「クレア?」

レッスン室の扉が少し開いていた。
中を見てみると、クレアがレッスン室の大きな鏡の近くに置いてある椅子に座っていた。

「あ、クレア!ここにいたんだね」

僕はホッとしてクレアに近づく。
本を抱きしめて俯いているクレア。

「ルカ…どこにいたの?」

クレアは俯いたまま僕に聞いてきた。
なんだか元気がない?

「え?音楽室にいたよ。今日はピアノのレッスンの日だったんだ」

「……ミッシェル先生の他にも誰かいたの?」

「あー、昔の知り合いが来ていたんだ」

「昔の?」

「そ、そう。今度その人の公演会に出演することになってね。その件で来ていたんだ」

真璃愛とも幼馴染みなんだけど、前世って説明できない…。

「すごく親しそうだったけど…」

「え!?」

見てた!?どこを!?

「いや、ただの昔の知り合いだよ!懐かしいからってね」

「懐かしいとあんな風に抱きしめるの?」

あの時だった!
もー!真璃愛め!

「うーん、ちょっと表現が大げさな人なんだよね。僕だけじゃなくて、ルイにだってあんな感じだよ」

ルイは上手くかわすけど、たまに失敗する時もある。
どうせ自分にはしないと思っているから。

「え!? そうなの?」

クレアが顔を上げて僕を見た。

「昔から僕達に対してあんな感じの友達だよ」

「……そうなんだ」

「クレアはどうしてレッスン室にいたの?」

「あ……またダンスを教えてほしいなって思っていたら、ここに来ていたの」

「ダンスを?」

僕はクレアにスッとお辞儀をして微笑む。

「では、僕と踊っていただけませんか?」

「……はい」

僕に手を伸ばしたクレアの手をそっと握り、僕達は近づいて手を組む。
クレアの大きな瞳が僕をじっと見つめる。
照れてしまうけど、ダンスの得意な琉翔になるぞ!
久しぶりのアイドルスマイル!

「ふふっ!少し上手になったね」

「そう?でもまだ苦手なの。わっ!また足を踏みそう!」

一生懸命に踊る君は本当に可愛いね。
これから先もダンスのパートナーは僕だけにしてほしいな。

少しだけ上手になった君のダンス。
でも前にレッスン室で踊った時から君と僕の距離は変わらないね。

僕と真璃愛を見てどう思ったの?
今でも届く緑色の手紙の送り主とはどうなったの?
僕はまだ勇気がなくて聞けないままだ。

ダンスが終わり、また僕は君の指先を右手でそっと掴む。
そしてキスをする真似をして、君を見つめる。

願いを込めて……。



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