転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
元子猫ちゃんの波乱

「琉翔くん!!」

フラン様はさっき目が合った時よりも満面の笑顔で僕に駆け寄って来た!
『ツインズ』のファンクラブイベントで子猫ちゃん達が見せてくれてた笑顔と一緒…。

「琉翔くんと同じクラスなんて夢みたい!」

「フ、フラン様……ちょっと近い……」

僕はうしろに体を引き、顔も引きつる。
茶色の瞳は大きくて意志が強そうな感じでキリッとしている。
髪は肩くらいまでの長さで、この世界では短めだ。

「キャー!琉翔くんと喋っちゃった!!私のことはマナって呼んで!私、琉翔くんの大ファンなの!ファンクラブにはもちろん入っていたし、コンサートも舞台も必死にチケットを取って会いに行っていたわ!琉翔くん覚えてる?デビューした年のコンサートで歌詞を間違えたことがあったでしょ?そのときの恥ずかしそうにしていた顔!琉翔くんファンのあいだでは可愛い!って有名なのよ!もう何回も繰り返して見ちゃったわ!もちろん生配信やSNSも必ず見ていたし、私のコメントを読んでくれたこともあったのよ!」

「………………」

間違いなく転生者の転校生。
とてもハキハキと喋る人で、どこで息継ぎしているのか分からないくらい早口だ。
そして僕が覚えていないことを覚えている。
何回も見てくれていたらしい……。

「え、えと、なんで……?」

どうして僕とルイが『クスフォードツインズ』だと分かったのかな?

「朝の公園でルカくんとルイくんがセカンドシングルのダンスを歌いながら踊っているのを見たの!!!大好きな曲だったし絶対に間違いないって分かったわ!!とても贅沢な時間だったわ!!それに『クスフォード』で『ルカ』と『ルイ』だし!!」

「………………」

ランニング終わってから体動かしてて、ルイと踊ったことがあったね…。
誰もいないと思ってつい歌っちゃってたな…僕。
あとユニット名が名字で名前はそのままだもんね…。

「皆の王子様はここでも王子様なのね!やっぱりふたりはアイドルなのよ!いつもみたいに大好きだよ!子猫ちゃん!また早く会いたいなって言って!琉翔くん!」

僕はピシリと固まった!
この世界の人達が分からない言葉と分かる言葉が!!
分からない言葉は謎の言葉に聞こえただろう。
しかし、分かる言葉はまるで僕がフラン様を口説いているみたいに聞こえるー!!
『子猫ちゃん』とは『クスフォードツインズ』ファンの人達のことを僕達がそう呼んでいたのだ。

教室内はシーンと静まりかえった。
先生も呆気にとられている。

僕は隣にいるクレアを見ることができず、サァーッと血の気が引いて青くなる。
なんか浮気がバレた人みたいじゃない!?
浮気なんてしてないし、クレアと付き合えてもいないんだけどさ…。

隣にいるクレアが震える小さな声で僕の名前を呼んだ。

「ル、ルカ……」


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