転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
馬車は王都の美術館に到着した。
先に馬車を降りた僕はクスフォード家の御者にお礼を伝える。

「ありがとう」

昔からクスフォード家の御者をしてくれているチャーリーはパチリとウインクして頑張れ!と笑った。

庭師のトーマスも「今が見頃の綺麗に咲いている薔薇を選びましたよ」と言ってくれた。
花束を可愛らしくラッピングしてくれたメイドのデイジーにも感謝しかない!
皆も応援してくれている。

「今日から新しい美術展が始まるんだよ」

エスコートしながら絵画鑑賞が趣味のクレアに説明する。

「嬉しい!ありがとう、ルカ!」

絵画をじっと見つめているクレアを僕はチラリと見てしまう。
クレアが気に入っていそうなじっと見ている絵画もチェックしておく。
クレアが進む速度に合わせてゆっくりと作品を楽しんだ。

美術館を出てカフェでクレアはイチゴのジュース、僕はコーヒーを飲みながら感想を伝え合う。
楽しそうな君に僕も笑顔になる。

王都の店舗街を歩いていたら急に足に絡みついてきたものがあった。

「えっ!?」

驚いて見てみると、薄いピンク色のドレスを着た小さな女の子が僕の足にしがみついている。
クレアも気づいたようだ。

「どうしたの?」

僕は女の子の頭を撫でて聞いてみた。

「……おとうさま、キライなの!!」

「ええ!?」

僕はしがみついている女の子の腕をそっと外してしゃがみこんだ。
赤茶色の長い髪に赤い瞳で3、4歳くらいだ。
お父様とケンカしたのかな?
大きな瞳に涙をためているけど我慢している。
少し気が強そうな女の子だ。

「お父様はどこにいるの?」

「……しらない!!」

プイッと顔をそむけて膨れてしまった。

「あなたのお名前は?」

クレアもしゃがみこんで女の子に優しく聞いてくれた。

「ローラ」

「そう。私はクレアよ。よろしくね」

「僕はルカだよ。ローラ様はどこから来たのかな?」

「……わからない。ヒック!」

ついに泣き出してしまった。

「ケンカして走ってここまで来たけど、迷子になっちゃったのかな?」

僕はクレアと顔を見合わせる。

「そうみたいね」

「とりあえず……」

女の子を抱き上げて頭をよしよしする。
周りを見渡してもこの子のお父様らしい人はいない。

「迷子でもあるし、騎士団の駐在所に……」

そう言いかけたら女の子が叫んだ。

「イヤ!!」

「わっ!びっくりした!」

「……かっこいいおにいさまとあそぶ!!」

僕にギュウッとしがみついてきた。

「ええ!? 遊ぶ…?」

順調だったデートは中断してしまった。


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