【完結】完璧上司の裏の顔 オタクなコスプレ配信者♀、実はファンだった上司に溺愛求婚される

「一回息止めて……ゆっくり吐いて。吸いすぎないで。そう。大丈夫だから。すぐに戻るよ」
「は、はぁ……」

 1分ほどゆっくり呼吸を繰り返すと、手足の痺れも治ってきた。

「あ……」

 気づけば密室で、強く抱きしめられていた。おそらくほんの数分間だったはずだが、その温もりは、千紗の恐怖心を和らげてくれた。

「ただいま、電気系統のトラブルの確認が終わりましたので、運転を再開します」

 アナウンスが流れる。

「もう大丈夫です」

 そう言っても井村は強く抱きしめたまま離してくれなかった。心臓の音が聞こえるほど密着している時間は、長いような短いような不思議な感じがした。

「もう着くから。無理やり付き合わせてごめん」
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