【完結】完璧上司の裏の顔 オタクなコスプレ配信者♀、実はファンだった上司に溺愛求婚される

 だんだん観覧車が地上に近づくと、井村が言った。
 井村のせいではないと言いたかったが、なぜだか言葉が出なかった。
 無事観覧車が地上に戻ったあとも、千紗の手を握ったままだった。
 ││どうしよう。振り払うのもなんか気が引けるし。

「送るよ」

 互いに無言のまま、千紗の家まで送ると、井村は、

「ごめん。高いところが苦手って知らなくて。次はもっとマシなとこに誘うから」
「井村さんのせいじゃないです。ありがとうございました」

 二人の間にはなんだか、いつもと違う妙な空気が流れていた。
 その日は、日課となっている田吾作への連絡をしようとして、できなかった。
< 112 / 304 >

この作品をシェア

pagetop