完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
 ──きっと、高倉のくせに生意気だ。とか理不尽極まりない愚痴を言っているのだろう。いいんだ。悪口大会で盛り上がれば。一人も嫌われるのも慣れてるからなんともない。

 その後、結局居残りした千紗は猛烈な勢いで書類の山からデータを打ち込んでいった。

「さすがに疲れた……」

 夜になって立花に押し付けられた仕事を終えると、もう社内には誰もいなかった。ぼっちは慣れている。
 しかしバイトに最後まで残らせるとは、セキュリティのなっていない会社である。千紗が産業スパイで機密書類を盗んだらどうするのだろう。
 一人は辛くない。気楽なものだ。あんな性悪女と一緒に合コンに行ったり、クラブとやらに行くくらいなら、仕事してたほうが百倍マシである。
 全てのデータを打ち終えて、PCの電源を落とすと、

「お疲れ様」
「ひゃっ!」

 突然後ろから井村に声をかけられた。

「これ、買ってきたんだけど飲む? ごめん。止めたかったけど、高倉さん、口出すと嫌がるから」

 温かいココアを渡される。

「あ、ハイ」

 別にいらなかったが、断るのも悪いかなと受け取る。
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