完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
そんなことを言っていた。その痛ましいまでの不器用さは、今まで器用に生きてきた井村の心を強く揺さぶった。
小学校から特に苦労もせずにスポーツは万能、成績優秀。家は裕福で、なにかを強く渇望したことなどなかった。
そんな井村だったが、千紗を好きになりどうにもならないもどかしさを初めて知った。
──この子じゃないと駄目だ。こんなに人を好きになることはもうない。
それは、理屈ではない魂の叫びのような確信に満ちた想いだった。
とはいえ、千紗は井村のことなど、オフィスにあるコピー機程度にしか目に入れていない。
顔も知らない田吾作にあんなに心を許すなんて危なっかしすぎる。実際会わなければいい人ぶるなんて簡単なのに、根が純粋なのだろう。
ツンツンしてるだけに一度信頼すると揺るがないらしい。
電話もしているのに、声で井村だと気づく様子もない。鈍感だ。心配になる。
早くリアルでも落とさないと。誰かが守らないとそのうち危ないことに巻き込まれる気がしていた。
「高倉さん……絶対リアルでも俺に惚れてもらうから」
井村が拳を握りしめ、いきごんでいると、ちょうど千紗からメッセージが来た。