完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される

「お二人でどうぞ楽しんだらいいんじゃないでしょうか。デートに向いてるお洒落なお店もたくさんありますし」

 言い訳しようとした井村の言葉を千紗はピシャリと遮る。

「そうね。こういうイベントよりはお洒落なお店のほうが合ってるみたい」

 立花がこれみよがしに、井村に腕を絡めた。
 すぐに千紗は二人に背を向けその場をあとにした。

 ──なによ。立花にも私にもいい顔して。優しい振りしてるけど、なーんも考えてないんだな! 好きだとかかわいいなんて言われて、驚いたの馬鹿みたいだ。
 頼まれたドリンクを買い、不愉快な気持ちのままアイさんの元へ戻る。




 
 井村はいつも美貌を隠すようにダサい格好をしている千紗が、休日にはあんなに綺麗にしているのを見て衝撃を受けた。
 すぐに、友人──おそらく配信者仲間──のいるほうへ行ってしまった。

 ──あんなにかわいい顔を丸出しにしたら、すぐにナンパされてしまう。

 思わず見とれたが、すぐに心配にもなった。やっぱりめちゃくちゃかわいい。死ぬほどかわいい。
 
「なんだろう、高倉さんてちょっと怪しくないですか」
「怪しい?」
「休日は別人みたいな格好したり、過去も謎だったり、なにかやましい秘密がありそうな気がするんですよねぇ」

 立花の言葉も、千紗が気になるあまり、心ここにあらずで右から左に抜けてしまう。

「ちょっと用事あるから、帰るわ。お疲れ様」
「え? ちょっと待ってくださいっ」
「ごめん、じゃぁ」

 頭の中は千紗のことでいっぱいだった。
 立花を振り切って、井村は千紗を追いかけた。

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