完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される
 立花の言葉も、千紗が気になるあまり、心ここにあらずで右から左に抜けてしまう。

「ちょっと用事あるから、帰るわ。お疲れ様」
「え? ちょっと待ってくださいっ」
「ごめん、じゃぁ」

 頭の中は千紗のことでいっぱいだった。
 立花を振り切って、井村は千紗を追いかけた。





「高倉さん!」

 振り返った千紗の目が冷たかった。

「なんでしょう」
「いや、なんていうかその……今日はどうしたの?」
「友達の付き添いです。デート中に他の女性のところに行くなんてよろしくないです。控えめに言って最低かと」
「違う! 仕事で」
「仕事で腕とか組むんですね」

 ──やばい。なんか怒ってる。
いつも不愛想だが、声に怒りを感じた。

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