聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
「…あたし、昨日ちょっと後悔したんだ。悪い評判は聞かないからって、蓮見先輩と翠を出かけさせて本当によかったのかなって」
彩那ちゃんがぽつりぽつりと話し始めて、私は聞くことに徹することにした。
「そしたらちょうど、翠のスマホ見っけてさ。その後タイミングよく紫呉さんから電話がかかってきて…あの時はまだ、なんでそんなに焦ってるのかわからなかったけど」
彩那ちゃんの手が、震えている。
「今、翠の話を聞いて…ようやくわかったよ。あの礼儀正しそうな紫呉さんが、ブツ切りしてまで慌ててた理由が」
いつも明るく私を引っ張り上げてくれるその手が、ぎゅっと小さく握られた。
「っあたし、超最悪じゃんっ…。親友が、自分のために危険を冒して怖い目にあってるのに、何も知らないで、心配だけは一丁前にしてるとか…っ、親友失格じゃん…っ!」
「っ…」
彩那ちゃんの悲痛な声が、冷たい非常階段に響き渡る。