聡明なインテリ総長は、姫を余すことなく愛したい
自分でもさすがにどうかと思い始めてきたとき、紫呉さんが歩みを止めた。



「ありますよ、噴水」



「へ…?」



「たしかこのアーチをくぐった先にあったはず。五角形だったかは覚えてませんけどね」



またもや苦笑する紫呉さんに、私は目を丸くする。



「え、噴水まであるんですか…!?」



「はい。俺の記憶が正しければ」



その言葉に期待しながら更に進むと。



「ほ、ほんとにある…」



まさに五角形の、大きくもないけど小さくもない噴水があった。



私がさっき言った通り、噴水の水面には風によって散ったバラの花びらがゆらゆらとたゆたっている。



「やっぱりありましたか。期待させといてなかったらどうしようかと」



「ふふっ、別にどうもしませんよ?」



今日はこんなに素敵なバラ園に来れた上に、紫呉さんの珍しい顔もたくさん見れて凄くラッキーな日かも。



思わず笑みをこぼして、そっと水面を覗き込んだ。



オレンジから段々と紫に変わりつつある夕焼け空が水面に反射して、キラキラと光っている。



……なんて、綺麗なんだろう。



きっと、私一人じゃ絶対にこんな景色は見れなかった。
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