白蛇神様は甘いご褒美をご所望です

 顔を真っ赤にする私に紫苑は「可愛い」と耳元で囁き、時雨さんは「初心ね」と生温かな視線を送ってきた。羞恥心に耐えながらも、気になる指輪を見ていく。値段とか一切書かれていないのがものすごく怖いが、ここで遠慮したら紫苑がしょんぼりする未来が浮かんだ。
 いくつか見ている内に気になったのは蔦のように絡み合う指輪で中央には青紫色の宝石が輝く。その色は紫苑の瞳に似ていて思わず手に取った。

「あら人魚の涙と龍の宝玉を使ってこしらえた逸品を選ぶとは、いいセンスしているわ」
「(さらっととんでもない素材を使っている!? うん、値段を聞かなくて本当に良かった!)……紫苑はどう?」
「小晴にふさわしいと思う。加護も悪くないだろうし」
(紫苑の選ぶ基準が私とは違うのを改めて考えさせられる)
「あと私の瞳と同じだから、それを選んでくれて嬉しい」
「……にゃ!?」

 紫苑は恥ずかしげもなく告げる。最初は「可愛い」とか「好き」と恋愛関係のボキャブラリーが少なかったのに、突然こんなことを言うのだ。

 くすぐったい。
 紫苑の言葉は裏とか表がないから、心地よい。
 自分の中に凝り固まったものが溶かされていくような熱を持つ言葉。
 この塊が溶けきったら私の心はどう動くのだろう――?

(私が好意を傾けたら紫苑は喜んでくれる? それとも離れてしまうのかな?)

 幸福の中であっても、不幸の未来を考えてしまう私はやっぱり臆病で、卑怯だと思った。
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