人生3度目の悪役姫は物語からの退場を希望する
「離縁を決意された姫様の表情は、キルリアにいた頃同様輝いておりまして。"マリー、ついて来てくれる?"なんて言われたら頷くしか選択肢はありませんね。マリーは姫様さえ良ければそれでいいので」

 マリーは国の事情など知りません。(アリアが幸せならオールオッケー)なので、誤解を解く気はありませんと姫様至上主義の侍女は宣言する。

「僕もマリーにさんせー」

 執務室のソファーを我が物顔で陣取って寝そべり専門書を読んでいたアレクは、チラッとロイの方を見ながらマリーに一票を投じる。

「改めてアリアと荊姫の計測したけど、随分魔力供給量が落ち着いていたし、アリアの気持ちが安定した証拠だね」

 やっぱりロイから離れるのがアリアにとっての最適解なんだよ、と嬉しそうにそう言ったアレクは、

「で、いつ離婚するの?」

 と尋ねる。

「しない!! というか、この状況元を正せば離縁状なんか持ち込んだアレクのせいだからな!?」

「ヒトのせいにしないでくれる? ロイがぐしゃぐしゃにして投げ捨てたのが悪いんじゃん。ちゃんと回収しろよ」

「あのあと、魔獣の大量発生で呼び出されたんだから仕方ないだろうが!?」

 立て込み過ぎて忘れたんだよっとロイは己のミスを悔やみつつ、

「なんでマリーはゴミ(離縁状)回収してないんだよ」

 と嘆く。

「私だってそんなものが落ちてるなんて知りませんし、そもそもクローゼットの中のものは何一つ捨てないでねと姫様からお願いされてましたので」

 話を振られたマリーは殿下の自業自得じゃないですか、と呆れ気味に肩を竦めた。

「と言うわけで、アリア連れて帰りたいんだけど、いつならいい?」

 早く手続きしてくれる? とアレクはロイを促すが、

「いつでも良くないっ!!」

 国に帰れ、シスコンっとロイは徹底抗戦の構えで叫ぶ。

「そうですよ、アレク様! アリア様は私の専属騎士様ですよ!? 連れて行かれたら困りますっ」

 ヒナがアリア様(推し)はあげませんというと、

「ち・が・う・から! アリアは俺の妻だ!」

 と叫んだロイは執務室を見回す。
 姫様至上主義にシスコンにアリアの信奉者(ファン)。ここにいる奴全員敵かっと頭を抱えた。

「……もう、全員帰ってくんない? 仕事進まないんだけど」

 と何故人の執務室にたむろするとやる気なく疲れたように机に突っ伏すロイに、

「ロイ様元気ないからせめてアリア様の神々しいお姿だけでも見せてあげようと思って」

 とスマホを取り出し、ロイの側によったヒナは先日アリアを激写した写真を見せる。
 そこには仕事後ドレスに着替えて着飾ったアリアがヒナと共に食事をしている様子が写っていて、カメラを向けられたアリアは恥ずかしそうに笑っていた。
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