君を忘れてしまう前に


 でも今のままだと、友人関係すら続けられそうにない。 
 そのうち、サラの隣で笑って同じ景色を見ることもできなくなりそうだ。
 そうなるくらいなら、サラへの思いは忘れてしまったほうがいいのかもしれない。
 そうしたら、また以前のように仲よくできるはず。

 あの一件からなにかが変だ。サラもわたしも。
 大げさだけど、2人の間に少しずつ積み上げてきたなにかが、跡形もなく崩れ去った気がする。
 やっぱり「なかったことにする」なんて、簡単にできることじゃなかった。
 日にちが経てば経つほど、それを実感する。

 もう欲張らないから。
 絶対に、サラの気持ちを求めたりしないから。
 せめて仲よしの友人として、サラのそばにいたい。
 くだらないことで笑い合いながら、一緒の時間を過ごしたい。 
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