君を忘れてしまう前に
「うそ、わたしのことをからかう余裕があるじゃん。わたしなんか全部が初めてで、どうしたらいいのか分かんないのに」
「仁花が初めてじゃなかったら、気がおかしくなるくらい嫉妬してるよ。おれは仁花と出会ってから誰ともこんなことしてない」
「出会う前はあるんじゃん」
「仁花と出会うって分かってたら誰ともやんなかったよ。こんなに誰かを好きになるなんて思わなかった。嫉妬する気持ちも分かんなかったし、されんのも嫌だった。でも今は違う。仁花だけだ、こんなふうに思うのは」
サラが啄むように何度もキスを落とす。
「サラの彼女になれる人なんて、わたしよりも絶対に可愛いもん。比べられるのもやだ」
「嫉妬してんの」
「そうだよ。めんどくさいって自分でも分かってるよ」
「めんどいわけねぇじゃん。嬉しいよ」
「ほんとに?」
「ほんと。仁花が可愛いことばっか言うから、そろそろ我慢するの限界かも。続きしていい?」
サラがシャツを剥ぎ取るように脱ぐと、引き締まった身体が露わになった。
ほどよく筋肉が付いていて、初めて見た男の人の身体の綺麗さについ目を奪われる。
「なに、そんなじっと見て。腹とかバキバキのほうがよかった?」
「ちが……。サラ、綺麗だなと思って……」
「おれは仁花みたいに綺麗な人、見たことないよ。これからもない。仁花が最後だよ」
サラが再びわたしに覆いかぶさる。
いつの間にかわたしの下着は全部脱がされて、素肌の隅々までサラに眺められた。
恥ずかしい反面、わたしのすべてをサラが受け止めてくれて心が満たされていく。
「仁花、いい?」
「……いいよ」
サラはわたしの両足を広げると、腰を深く沈めた。
経験したことのない痛みが身体の中心をビリビリと走り抜ける。
痛いけど、不思議と怖くはなかった。
サラがわたしの中に入ってくることがすごく嬉しい。
ずっとサラが欲しかった。
欲しくてたまらなかった。
手の届かない人だと思っていたサラが今はこんなにも近くにいる。
瞳を潤ませながら、余裕のなさそうな表情でわたしを見つめるサラがなによりも愛おしい。
抱きしめて欲しくて手を伸ばす。
サラがわたしに答えるように抱きしめ、ぴたりと肌が重なり2人の距離がなくなった。
「まだ痛い?」
「平気、だよ」