孤独を生きる君へ
お母さんもお父さんも、それに真穂も。嬉しそうで嬉しそうで息が詰まる。うまく呼吸ができなくなってくる。

「髪の毛は濃い茶色でね……――」

真穂が新しくできた〝彼氏〟について楽しそうに語り、それをお母さんお父さんが満足げに聞いては相槌を打ち、時折褒めたたえる。そんな生ぬるい空間だった。

家族の団らんの中、そこに私はいなかった。

私は惨めだな、なんて不覚にも考えてしまう。私はお父さんお母さん、それに真穂が嫌いじゃないのに、みんなは私を嫌っている。……こういう差だ。〝嫌いじゃないのに〟じゃなくて〝大好きなのに〟と言えればまた違ったかもしれない。

私が大好きと言えないから何も変わらないし変われない。

ただ大好きと伝えるだけのことを、変わることが怖くて恐れている私には口にすることができない。

これまで以上に冷められてしまうかもしれない。そんなことが起きたら私は何もなくなってしまう。早くバイトをして、居場所を少しでも確保しないと。私が私でいられなくなってしまう。

そして、一撃を刺す言葉はこれだった。



「その人の名前ね、飯田光大っていうんだよ」


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