アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 妊娠がわかって以降、私の体を気づかって、大都はまたマンションで暮らし始めている。
 しかし、芸能活動があと半年と期限付きとなった今は、何かと注目を浴びやすい。
 たとえば、人気絶頂で契約更新をしない理由の「父親との約束」が本当なのかと、探られるのは容易に想像できる。
 つまり、第二、第三の週刊ScoopOneの茂木のような記者が現れる可能性が出てきてしまったのだ。いくら注意していても、そんな輩を相手にどこまで防御できるのか、神経質にならざる負えない。
 以前、大変な目にあった経験上、マンションに入るときには、ふたりで一緒にならないように用心深く行動している。

「私のことは、心配しなくても大丈夫だから、大都こそ無理しないで」

「無理していないから平気だよ」

大都は、ふわりと微笑んだ。そして、なにやら思い出したようにフフッと笑う。

「それより、今度前に載った雑誌の仕事が入って、北川さんにヘアメイクを頼むことになったんだ。いまから会うのが楽しみだよ」

 普段、落ち着いて大人っぽい大都の表情が、よほど嬉しいのか、いまは幼く見える。

「北川さんと大都って、兄弟みたいだよね」

「ああ、あんな兄貴がいたら……と思うよ。北川さんには、お世話になりっぱなしで、何かお礼ができたらいいんだけど」

「ふふっ、北川さんと大都だったら、イケメン兄弟とかでSNSで話題になるよね。大都が北川さんにヘアカットをしてもらう映像とか、バズりそう」

 何の気無しに言った言葉に、大都が目を丸くする。

「それ、良さそう。あっ、でも、人気が出て自分がヘアカットしてもらいたいときに予約が取れないのは困るな」

 ムムムッと、顎に手をあて、本気で悩む大都の様子に心がほっこりしてしまう。
< 160 / 211 >

この作品をシェア

pagetop