アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

服を着ているからって、安心してはいけません

 ピピ、ピピ、とアラームが鳴り出した。

これがドラマなら、「うふふ」な展開が待っているのだが、幸い? 私は、独りで朝を迎えた。

手探りで枕元にあるスマホを探し出し、アラームを止めると、おもだるい瞼を開いて、のっそりと起き上がる。
いつもと変わらない朝がやってきて、低血圧の私はシャワーを浴びに、体を引きずるようにして、バスルームへ向かう。
 カランを押し上げると、温かな水滴が降り注ぎ、体中の細胞が目覚めるような心地よさに気分が上がり始める。
 朝が弱い私のルーティン。これが無いと目が覚めない。
 ソープをホワホワに泡立て、それを手のひらに乗せ、肌の上に滑らせる。
 シャワーで流せば、肌の上を水滴が弾けて滑り落ちていく。

 肌年齢マイナス5歳でいられるのは、日々のお手入れの賜物だ。
 自分自身が、エステサロンmodération の広告塔の役目も担っている手前、手を抜く事なんて、ゆるされない。

 洗面台の大きな鏡の前で、全身のチェックをしてながら、タオルで押さえるように水滴をふき取った。

 顔にシートパックを張り付けてから、オーガニックのボディクリームを肌に塗り込んでいく。甘味のある香りに全身が包まれる。
 シートパックを外し、メイクを施す。あとは、部屋に戻って、スーツで武装すれば、完璧だ。

 イイ感じに仕上げた体にタンガを身に着けバスローブを羽織り、自分の部屋に戻ろうとドアを開けた。
すると、私の行く手を塞ぐ壁に、ぽすんっとぶつかる。

「あれ?」

それは、壁ではなく、大都だった。

「おはよう、お姉さん。朝から刺激的な格好だな。それに甘い香りがする」

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