飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「……」

 
 行ってしまった。
 
 私の、一世一代の、大チャンスが……っ

 私は突然現れた希望が一瞬で砕け散ってしまったという事実を、すぐには受け止めきれずに動けなくなった。

 
「……おっけー?」

 
 突然、すぐ近くで男の子の声がした。
 

「!?」

 
 バッと顔を向けると、夏宮くん。


「え!?」


 夏宮くんはすぐ後ろにいて、私の肩の上から私を覗き込むようにして見ていた。

 こんな近くで夏宮くんを見るのは初めてだし、話をするのもはじめてだから、どうしたってドキドキしてしまう。

 わ、近くで見てもかっこいい――

 
「その手」

 
 夏宮くんが私の手元を指さした。

 そこには親指と人差し指をくっつけて丸を作った私の手。

 さっき八木澤さんに送るはずだった、ばらし忘れていたOKサイン。

 
「もしかしてオッケー♪ってやろうとしてたの?」

 
 夏宮くんは自分の顔の横にOKサインを作ってみせた。

 なにげない仕草に花が飛んで見えるのはなんでだろう。

 なんて返していいか分からずにかたまっていると、夏宮くんがフハッと笑った。

 
「かわいー」

「……⁉」


 かあっと燃えるように顔が熱くなった。



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