飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

初彼

「死なないでー月寄ー」


 炎天下の屋上。

 やってくる熱風は、先週のそれよりも熱さを増して、サウナ状態。


「……今までありがとう、キョン」


 助けに来てくれたらしいキョンに、私はいつもの定位置で体育座りして悟りを開いた微笑みでそう返した。

 
「それっぽい別れを告げない」


 キョンは私の腕を持って立たせると、そのまま屋上の扉を開けて、私を外よりはいくらか涼しい階段の踊り場に連れ出した。

 私を階段の一番上に座らせてどこかにいなくなったと思ったら、冷たいスポドリを手に戻ってきた。


「入江が心配してた」


 キョンはそう言ってスポドリの蓋を開けて私に手渡す。
 

「……」


 私は大人しくそれを受け取って、口に含んだ。


< 246 / 327 >

この作品をシェア

pagetop