飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「なぁーん」

 その鳴き声にハッとして目を向けた。

 ついてきていたらしい猫ちゃんが私を見上げている。
 
「……助けてくれたの?」

「なぁーん」

 そんなわけないと思いながらも、猫ちゃんの返事が〝そうだよ〟って言ってるようにも思えて、私はしゃがんで「ありがとう」と笑った。

 階段を下っていくと、踊り場から駅前広場が見渡せて、さっき声をかけられたモニュメントの方を見てみる。

 大学生くらいの男の人がフラフラ歩いては、女の人に声をかけてるのが見えた。

 ……このままここにいたら、私自身がなにかの事件の被害者になっちゃいそうな気がした。

 「……帰らなくちゃ」

 ため息をついた私は階段を下りてビルを出た。

 そんな私を、相変わらずじっと見てくる猫ちゃん。

 改めて見ると、身体は少し汚れちゃってるけど、野良にしては佇まいが上品でなんだかかっこいい。

 成猫より少し小柄で、こんなに人懐っこいってことは最近まで飼われていたのかもしれない。


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