飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 そのとき、凛の手がビクッと震えた。

 なんか夢の中で怖いことでもあったのか…?

 心配になって凛の様子をうかがう。


「……ちょうちょ」


 ……おい。

 月寄凛、おい。

 ちょうちょて。

 ふざけんな。

 かわいすぎるだろ、なんだその寝言。

 もしかして起きてる?

 俺、試されてる?

 夏宮くんどれだけ耐えられるかなって弄ばれてる??


「……フフッ」


 俺の考えてることなんか想像もしないだろう凛が、へにゃりと笑った。

 俺はギッと歯を食いしばって、耐える。


 だめだ。 朝を迎える頃には俺、心肺停止してるかもしんない。


 ……不思議だ。

 自分から近づいたり触れにいくのは全然出来たのに。

 凛がいちいち可愛い反応するからもっと、もっと見たいってエスカレートさせてしまうくらいなのに。

 今、目の前で寝てるだけの凛にこんなにも振り回されてるなんて。
 

 ……あ、そうか。
 
 自分からさわりに行けばいいのか。


 思い立った俺は顔をあげた。


 いっそセクハラしまくって、俺のこと嫌いになってもらえばいい。
 
 出ていけって言われるぐらい嫌われて、嫌われて、嫌われてしまえばいいんだ。
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