悲恋の大空

第6話「合宿はじめっ!」

 今日は待ちに待った林間合宿の日。


 私もなんだかんだ言って、楽しみだったりする。



[永瀬 里沙]
 「晴れて良かったねー♪」


[朝蔵 大空]
 「天気予報だと、明日も明後日も一応快晴だって」



 私はケータイで調べて見ていた。



[狂沢 蛯斗]
 「キョロ……キョロ」



 挙動不審に……狂沢くんが挙動不審なのはいつもだけど、そんな狂沢が周りを気にしながら歩いている。



[朝蔵 大空]
 「どうしたの? 狂沢くん」


[狂沢 蛯斗]
 「永瀬さん! ちょっと背中に隠れさせてもらってもいいですか?」


[永瀬 里沙]
 「良いけど、何?」



 狂沢くんが自分より背の高い里沙ちゃんの背中に隠れた。


 何かに怯えている……。



[刹那 五木]
 「おはよー!」


[巣桜 司]
 「お、おはようございます」



 あれれ、あのふたり喧嘩してたよね?


 割と良い感じの雰囲気に見えるけど……。



[刹那 五木]
 「あれ、狂沢くんは? 一緒じゃないの?」


[巣桜 司]
 「それが見つからなくて……」



 司くんは狂沢くんのことを探しているようだった。



[永瀬 里沙]
 「狂沢? 巣桜くん達来たよ? 行かなくて良いの?」


[狂沢 蛯斗]
 「永瀬さん! シー!」



 ちょっと里沙ちゃん!!



[刹那 五木]
 「あ、居た」


[巣桜 司]
 「狂沢くん……」


[狂沢 蛯斗]
 「ぶるぶるぶる……」



 すると、五木くんが司くんの肩に手を置いた。



[刹那 五木]
 「ほら一緒に謝ってあげるから」


[巣桜 司]
 「はい……」



 司くんと五木くんがふたりでこちらに歩いて来る。



[狂沢 蛯斗]
 「どっちもこっちに来ないで下さい!」



 狂沢くんが怖がっている。


 私と里沙ちゃんは何も言わずに立って見ていた。



[巣桜 司]
 「狂沢くんごめんなさい! もう、怖いことは言いません」


[狂沢 蛯斗]
 「え……?」



 狂沢くんが司くんと目を合わせる。



[刹那 五木]
 「おれと巣桜くん和解したし、もう喧嘩しない♪ だから、これからは3人で仲良くしよっ!」


[狂沢 蛯斗]
 「3人で……」


[巣桜 司]
 「ダメ、ですか……?」


[狂沢 蛯斗]
 「本当に、『監禁』とか言わないですか」


[巣桜 司]
 「誓います」


[狂沢 蛯斗]
 「や、約束ですよ……」



 わーお! あの3人、ちゃんと仲直り出来たみたいで良かった!!


 その後、私達は目的地まで運んでくれる貸切バスを待っていた。



[古道 大悟]
 「朝蔵ちゃんおはよ!」


[朝蔵 大空]
 「あ、おはようございます!」


[花澤 岬]
 「おはよう」



 古道先輩に、花澤先輩だ……。


 そっか、このふたりと5人組で行われる探検スタンプラリーのグループ組んだんだよね。


 狂沢くんと司くんともグループ一緒だし、本当にあのふたりが仲直りしてくれて助かったー……。



[古道 大悟]
 「今日からよろしくねっ!」


[花澤 岬]
 「……よろしく」


[朝蔵 大空]
 「は、はい!」



 花澤先輩と古道先輩はそれだけ私に伝えると、3年のバスに乗車して行った。



[二階堂先生]
 「よーしお前ら、10時までここで待機なー。 勝手にどっか行くなよー、迷子になんなよー、先生はちょっと御手洗に行って来るから〜」



 二階堂先生はトイレに行くと行って姿を消してしまった。


 私達は広い公園のような場所で待機させられていた。


 中には『10時に戻って来れば良いんでしょ理論』で勝手にどこかへ行ってしまう者も居た。



[男子A]
 「なぁ、待ってる間皆んなでドッチしようぜ!」


[男子B]
 「良いな! 二人三脚のウォーミングアップにもなるし!!」



 うわこの人達ドッチボールしようとしてる、これって私達も参加させられるの……?



[永瀬 里沙]
 「ちょっと! 私もやるわよ!!」



 そう言って里沙ちゃんがノリノリで参加しに行った。



[朝蔵 大空]
 「里沙ちゃん……」



 私はドッチボールやりたくないから隅のほうで休んでよっと。



[剣崎 芽衣]
 「大空ちゃん!」


[朝蔵 大空]
 「芽衣様…………ん?」



 芽衣様が今、私のことを『大空ちゃん』って呼んだ……!?



[朝蔵 大空]
 「めめ、芽衣様が私の名前を……」


[剣崎 芽衣]
 「前から思ってたけど、その芽衣様って何?」


[朝蔵 大空]
 「め、芽衣様は私の憧れの女性だから……」


[剣崎 芽衣]
 「もう大空ちゃん! 友達なんだから私のことも名前で呼んで!」


[朝蔵 大空]
 「い、良いのでしょうか……」



 私は今日から、芽衣様のことを芽衣ちゃんと呼ぶことにした。


 皆んながドッチボールで遊んでいる様子を私は見ていることにした。


 スポーツはやるより見るほうが好きなんだよね。



[刹那 五木]
 「狂沢くん! 巣桜くん! やろーよ!」


[巣桜 司]
 「ドッチボール、苦手なんだよな……」


[狂沢 蛯斗]
 「んまあ、やっても良いですかね」


[巣桜 司]
 「狂沢くんがやるなら……」



 そしてチーム決めが始まり、最初のゲームが開始された。



[木之本 夏樹]
 「文島ぁ! 負けたらジュース奢りだぜ!」


[文島 秋]
 「望むところだな」



 木之本くんと文島くんの勝負!


 こう言う時このふたりって味方にならず敵として戦うこと多いよね、本当に仲が良いって、こう言うことを言うのかな?



[刹那の友達]
 「五木なんでそっちに居るんだよ? こっち来いよ〜」


[刹那 五木]
 「んー、まあいっかー!」



 五木くんが友達に手招かれて狂沢くん達とは違うチームに行ってしまった。


 
[狂沢 蛯斗]
 「あ! 裏切り者!」


[巣桜 司]
 「……」


[刹那 五木]
 「えー、別に裏切ってるつもりは……おおっと!」



 ボールが五木くんに当たりそうになる、狂沢くんが投げたのだ。



[刹那 五木]
 「今投げたの狂沢くん?」


[狂沢 蛯斗]
 「よそ見してる場合じゃないですよっ!」



 狂沢くんが反復横跳びをして五木くんを煽る。



[刹那 五木]
 「えーん、ほんじゃおれも本気でやっちゃっおっかなー」



 五木くんはそう言いながら狂沢くん目掛けてボールを思いっ切り投げた。



[狂沢 蛯斗]
 「ぶえっ……!!?」





 パンっ!!





 五木くんが投げたボールが狂沢くんの顔面に直撃!!



[狂沢 蛯斗]
 「い、痛いよ……」


[巣桜 司]
 「狂沢くん!」



 咄嗟に司くんが狂沢くんの元に駆け寄って心配する。



[巣桜 司]
 「チッ」



 司くんは狂沢くんの顔を確認した後、静かに舌打ちをした。



[刹那 五木]
 「やべ」


[巣桜 司]
 「お前、殺す」



 その瞬間、司くんは別人のように。


 司くんがボールを拾って五木くんに投げ飛ばす。



[刹那 五木]
 「うおっと……が、顔面セーフだからっ!!」



 五木くんがボールを避けてその場に倒れると、司くんが枠を超えて五木くん達のコートに入って来た。



[巣桜 司]
 「……」


[刹那 五木]
 「こ、殺される」



 つ、ついにこの土屋高初の殺人事件にっ……?


 け、警察呼ばなきゃ。



[土屋 遊戯]
 「ちょっとちょっとー! 君達、何してんの〜?」



 ここでひとりの男子生徒が声を挙げた。



[朝蔵 大空]
 「あれ?」



 土屋遊戯先輩……?


 そっか、あの人も3年生なんだよね。



[土屋 遊戯]
 「へぇドッチボール〜? ぷぷ、お前らガキかよ」



 憎たらしい笑顔を浮かべた土屋先輩が私達の前に現れた。



[永瀬 里沙]
 「あのクソガキ何しに来たのー!」


[文島 秋]
 「……二人三脚の準備を」


[土屋 遊戯]
 「ノンノーン! 二人三脚とか、つ・ま・ら・な・い♪」



 土屋先輩一体何言うつもりなんだろ。



[木之本 夏樹]
 「じゃあ何すんだよっ!」


[土屋 遊戯]
 「君達には、お馬さんごっこレースをしてもらいまーす♡」



 『お馬さんごっこレース』!!?


 なんか、やらしいぃっ!!



[二階堂先生]
 「……」



 先生達皆んな固まってるよ!


 土屋先輩って、教師陣よりも発言力あるって、本当の話だったんだ……。


 こんな無茶苦茶な人に権力持たせちゃダメだよ!!



[女子A]
 「えー、きもーい」


[男子A]
 「はぁはぁ、興奮するっ……///」



 次々とお馬さんごっこ状態になっていく周囲。



[朝蔵 大空]
 「ま、待ってよ……!」


[永瀬 里沙]
 「よっしゃアン子乗れぇー!」


[杉崎 アンジェリカ]
 「フッ、私は7歳の頃から乗馬を習っています」


[永瀬 里沙]
 「お! 頼もしいな! 行くぞ!」


[杉崎 アンジェリカ]
 「はいっ!!!」



 里沙ちゃんがアンジェリカさんを乗せて連れ去ってしまった。



[朝蔵 大空]
 「だから待ってってば!!」



 み、皆んな土屋先輩の指示に従っちゃっている……!



[剣崎 芽衣]
 「大空ちゃん乗れる?」



 気付くと芽衣ちゃんが私の傍で四つん這いになっていた。



[朝蔵 大空]
 「どっひゃー!? めめめ芽衣様いけません!」



 私は急いで芽衣ちゃんを立ち上がらせる。



[剣崎 芽衣]
 「また様呼びになってるよ?」


[朝蔵 大空]
 「いえここはあえて芽衣様と呼びます! 芽衣様の上になんて乗れません! 私の上に乗って下さい!!」



 私は芽衣ちゃんにそう懇願(こんがん)する。



[文島 秋]
 「皆んな意外と乗り気?」


[嫉束 界魔]
 「文島くん乗って!」


[文島 秋]
 「嫉束くん(きみ)まで……て言うか、普段女の子から王子様って言われてる君のほうが、馬に乗るの似合いそうだと思うんだけど」


[嫉束 界魔]
 「そんなこと無い! 文島くんこそが、本物の王子様だよ!!」


[文島 秋]
 「そ、そう?」



 文島は苦笑いで嫉束の背中に乗った、嫉束は誇らしげな表情で居る。



[刹那 五木]
 「えと……おれが乗られるほう?」


[巣桜 司]
 「うん」



 巣桜が刹那に『四つん這いになれ』と指先で指示を出す。


 刹那は大人しくそれに従う。



[刹那 五木]
 「じゃあ出発しまーす……」


[巣桜 司]
 「遅い。 もっと早くして下さいよ」


[刹那 五木]
 「は、はい」


[巣桜 司]
 「ほら、早く」



 巣桜が足で刹那の脇腹を蹴る。



[刹那 五木]
 「ちょ、蹴らないでぇ! 痛い痛い! もしかして、この間のことまだ怒ってる?」


[巣桜 司]
 「別に。 ほら走れっ!」



 巣桜は今度は刹那の尻を(はた)く。


 刹那は『ヒィヒィ』言いながら必死に両手足を動かした。



[狂沢 蛯斗]
 「卯月くん! 乗って下さい!」


[卯月 神]
 「おや、僕が乗るほうで良いんですね」



 卯月が狂沢の背中にポンと乗る。



[狂沢 蛯斗]
 「しっかり捕まって下さい!」


[卯月 神]
 「はい? ……こうですか?」





 ブォーン!





[卯月 神]
 「……!」


[卯月 神]
 (この人四つん這いじゃなくて《《四足歩行》》でまともに走ってる……なんで四足歩行でこんなスピード出るんですかこの人!)


[狂沢 蛯斗]
 「うおおおおおおおお!!!」



 走り出した狂沢と卯月は、先頭を走っている笹妬と木之本のペアを狙う。



[木之本 夏樹]
 「マジ()えーあいつら!」


[笹妬 吉鬼]
 「追い付かれる……」


[木之本 夏樹]
 「てか()えぇ……」


[笹妬 吉鬼]
 「大分(だいぶ)キモいな」


[狂沢 蛯斗]
 「うおおおおおおおおお……!!」


[卯月 神]
 「っ……」



 狂沢のスピードに耐えられなくなった卯月は、狂沢の背中からずり落ちて置いてかれてしまう。



[木之本 夏樹]
 「て言うか、これそもそもゴールどこ? どうやって勝敗決めんの?」


[笹妬 吉鬼]
 「分からん」



 その時だった。



[朝蔵 大空]
 「芽衣ちゃん私ちゃんと馬になれてますか?」


[剣崎 芽衣]
 「やばい……大空ちゃん逃げて!」



 芽衣ちゃんが私の背中から降りてどこかに逃げて行く。



[朝蔵 大空]
 「あれ? 芽衣ちゃん?」


[狂沢 蛯斗]
 「うおおおおおおおお」





 ドン!





 私は後ろから突っ込んで来た狂沢くんにより、天高くへと飛ばされてしまった。


 ……。





 アオーン……!





 狼? 野犬? が、鳴いている。



[朝蔵 大空]
 「イタタ……」



 目が覚めると私は暗い森の中に居た。


 もう夜になっていて、辺りがよく見えない。



[朝蔵 大空]
 「ここ、どこ? 皆んなは……?」



 私は皆んなを探してしばらく歩く。


 少し歩いたところで私は立ち止まり、恐怖のあまり涙を流す。



[朝蔵 大空]
 「怖い……里沙ちゃん、卯月くん……」



 助けて!





 ガサガサガサ……。





[朝蔵 大空]
 「えっ……」



 草むらがゴソゴソと音を鳴らして揺れているのが見えた。


 私は強い光に照らされる。



[朝蔵 大空]
 「きゃー!」


[???]
 「朝蔵くん、大丈夫ですか!?」



 人だった、私の名前を知っている?



[朝蔵 大空]
 「あ……会長」


[音乃 渚]
 「はい、ワタシは音乃(おとの)(なぎさ)。 皆んなの、生徒会長です」





 つづく……。
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