私を導く魔法薬
 二人は湖まで戻ると、まずは食事をすることにした。

「…あんたはヒト型よね…人間の食べもので平気かしら?私ともちょっと違うのよね…」

 ダリアはそう言いながらテーブルに成分表と料理本を取り出してめくり、材料や調味料成分をヒト型に合うよう照らし合わせる。

「あっ」

 彼女が声を上げ、言った。

「この本、読んでみてよ。それだけでもこの国の者かは分かるわ。…今まで文字を一切読んだことがないのなら話は別だけど」

 彼は言われた通りに魔女の出した一冊の本を手に取り、ページをめくった。

「…所々は読めるが、完全ではないな…」

 彼は首を振りそう言った。

「そう…」

 それを聞いた彼女は考える。

 この本は半魔族の中で言い伝えられてきた、様々な種族のための料理が書かれている。

 この魔族の国は、かつては人族の、つまり人間のいる国とは隣同士にあったという。
 しかし一人の人間の娘だけが魔王、少数魔族とともに、皆でここに移動してきたのだそう。

 そのため魔族の中にも娘のおかげか、古い人間の文字が分かる者がいる。

 魔族でも人族と接して生きる者たちの中にも分かる者はいるが、未だ色濃くそれが残っているのは他でもなく彼女たちのような半魔族たちだった。

 自分が読める本を少しは理解できる、ということは、やはり彼は人族の可能性が高いのではないだろうか…

 そんなことを考えていると、彼が口を開いた。

「…ダリア。悪いが何でもいい、そろそろ食い物が欲しいんだが…」
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