私を導く魔法薬

彼とのひととき

 小さなテーブルに二人分の食事。

 彼とダリアは向かい合わせて食事を始めた。

「ねえ、大丈夫?本に書いてあったとはいえ、あんた自身が平気とは限らないから…」

 不安げに尋ねる彼女に彼はフッと笑うと、サジにすくったスープを見て言った。

「ダリア、これはお前が懸命に作った食事だ。お前が俺から目を離すその時まで、何があっても俺は倒れたりはしない。安心しろ」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。
 しかし彼女はすぐに思い当たる。

「っ、それは『悪い冗談』とかいうものね!?こんなに心配しているのに…っ」

 そこまで言って急いで口をつぐむ。

 他の心配などしたことがないはずの自分。
 心配をしても周りからは純魔族でないことを理由に、お前ではこちらの気持ちは分からないだろう、と言われてきた。

 しかし彼は真面目な顔でこう返す。

「冗談ではない。俺はお前の親切を無駄にしたくはないんだ。ダリア、せっかくの食事が冷めるぞ」

 …彼は一体どこまで『人が良い』のか。
 今日会ったばかりだというのに。

「…心配なんてっ、してないわよ…」

 彼の真剣な眼差しに、ダリアは下を向いてそう言ったのだった。
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