私を導く魔法薬
 そして数日、彼の記憶を戻すための方法を考えて試し、ともに生活をする日々を送った。

 彼に薬を作る過程を見せたり、混血魔族の歴史を教えたり。

 彼はどれも興味深く聞き、見入っていた。

 ダリアは次第に、彼の記憶がもし戻らなくともこうして過ごすのも悪くないと思い始めていた。

 彼は穏やかに自分の話を聞いてくれ、意見もくれる。

 今まで誰も混血である自分の話をまともに聞いてくれる相手はいなかった。
 いつも昔の王族の血と特別視され、魔族と人間の間にある自分を半端と見る。

 いくら今は自分の話を熱心に聞いてくれる彼でも、いつか彼の記憶が戻ればこんな半端な自分を憐れむようになるかもしれない。

 ダリアはたまに湧き出るそんな考えを自分の中で打ち消しながら、彼の記憶を戻そうとしていた。

 彼は時折それに気付いてか穏やかな表情で彼女を気遣うような行動を取ることがあるが、ダリアにとってそれはモヤつきの種になるだけ。

「あんたは何も気にするんじゃないわよ」

 ダリアはそう言って彼にいつもの態度でいるよう制することしかできなかった。
< 26 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop