私を導く魔法薬

ダリアの決意

「そ、そんなこと言ったって…」

 ダリアは手も、そして足も震えだす。

 さらに自分は今まで、相手の注文通りの薬を作り、その薬を飲む相手の顔も見ずに売ってきたということに気付く。

 それが魔力の高い、位も高い金持ちの貴族ばかりだったとしても。

 しかし彼は違う。

 彼に自分の目の前で、しかも強い効力のある方法を試さなければ、もう自分にできる方法は無いかもしれないのだから。

「きっと酷いことにはならない。俺がお前を信じているからだ」

 彼は変わらずこちらに向かって笑い掛けてくれている。

 ダリアは自分を落ち着けるために目を閉じた。

 …彼の言う通りかもしれない。

 今までも、自分の腕だけを信じて一人薬を作って来たのだから。

「…やるわ。ここまでその…私を信じてくれた、あんたのためだから。だから…上手く行ったら感謝しなさいよ?」

「約束しよう、ダリア」

 彼は真剣な眼差しでそう答えた。


 彼も、そしてダリアも頷き、しっかりと二人は向き合った。

 ダリアは汲み入れた泉の水を彼に差し出す。

「この『清き森』の水よ、まず飲んで。これはあんたの魔力を呼び出すためのものだから」

 すると彼は最初のときと変わらず、迷いのない表情でコップの中の水を飲んだ。

 そして彼が飲み干したのをしっかりと確認すると、次は自身の中に刻まれている魔族の血を呼び起こしながら呪文を唱える。

 あとは彼に馴染んだ清き水が、彼の微量の魔力を導き出してくれるはず。

 呪文を唱え終えたダリアはその時を待った。
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