私を導く魔法薬
『…我と、我が妃の血を受け継ぐ者よ…』

 突然、まるで彼の体内から響き渡るように聞こえる、威厳のあるその声。

『忘れるな、平和を愛し生きることを……』

 ダリアは幼い頃、自身の魔力が目覚め始めた頃に聞いた声を思い出す。

「これは…先代の魔王様の声だわ…!!」

 その昔、人間の娘とともに生きたという魔王がいた。
 それが混血魔族の始まりとされている。

 そしてこれは人間との混血である魔族にだけ刻まれている『約束の記憶』なのだと、同じく混血である死んだ母から聞かされていた。

「…そうだ…俺の中にも、魔族の血が…。しかし俺は人族の国に生まれた。人間のものが色濃いため、俺は人間として生きてきたんだ」

 彼は思い出したらしく、そう呟く。


 彼も混血だった。

 しかし同じ混血でも人間の血が濃い。
 ということは、この国から人間の国に渡り人間とともに生きていた混血魔族がいたということ。

「ダリア、俺の祖先は魔族だ。そして……」

 そう言い終わらないうちに、彼は膝から崩れ落ちた。
 胸を押さえ、必死に何かの衝動に堪えているように見える。

「っ、あんた!!どうしたのよ!?」

 ダリアは目の前の彼に急ぎ寄ろうとする。
 しかし彼の周りには強風が巻き起こり始め、近付くのは難しい。

 まだ彼に何が起きたのかは分からない。
 それでもダリアは彼のことを助けようと思った。
< 32 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop