私を導く魔法薬
「来るな…!!凍りたくなければ近付くな!身だけじゃない、心も凍り付く…!!」

 今度は地を這うかのような低い声で鋭く言い放つ。

 ダリアは男の突然の言葉にさすがに驚き、反射的に男から距離を取るため後ろに下がった。

 男にまとわりつく冷気は先ほどよりも強く渦巻き始め、自分だけでなく近付くものを皆拒絶するかのようだった。

「っ…そこまでしてあんたがこの森に来た理由を、私は聞きたいのよっ!聞くまでは引かないからね!」

 負けん気の強い彼女はそう言い、自分の持ち歩いている小瓶の一つを取り出して一口飲んだ。

 体から熱を発する効果がある、彼女が調合した自慢の薬。
 これで自分は寒さから守られた。
 次はこの吹雪を呼び込んでいる、この男を何とかする番。

「とにかく落ち着きなさいよ!これ以上森を荒らしたら私が許さないわ!」

 言うが早いかダリアは、何か言葉を発しようとしたらしい男の数ミリ開いた口を目掛け、残っていた瓶の中の液体薬を魔力を込めて投げ入れた。

「私の自慢の薬よ!私の飲みかけで悪いけど、味も悪くないんだから…!」

 少しだけ残っていた、熱を発する薬。
 口に上手く入ったとしても数滴で済むはず。それなら正体不明のこの男が雪の精霊やなんかだったとしても致死には至らない。

「…入った…?」
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