【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

星空の下、あなたの未来を願う

 ソニアが去ってしばらくしてから、殿下と連れだって外に出る。

 歩いてすぐだから、送ってくれなくて大丈夫と言ったのだけど。

「もう少しそばに居たい。迷惑か」

 なんて言われてしまったら、結構です、とは言えなかった。
 
 
 先程までの荒れ模様が嘘のように、空は穏やかに晴れていた。
 ()いだ夜空に無数の星々がきらめいている。
 
(あっ、流れ星)

 キラリと光った流星を見つけ、私は目を閉じた。シリウス殿下が命を落としませんようにと祈り、目を開ける。すると、当の本人が不思議そうな顔でこちらを見下ろしていた。
 
 
「何をしていたんだ?」

「流れ星にお願い事をしていたんです。あっ、また! 殿下も何かお願い事をしてみてください!」

「ん? ああ」

 シリウスは空を見上げ、目を閉じる。彼の長いまつげがふるりと揺れ、数秒で目を開けた。
 
 
「何をお願いしたんですか?」

 好奇心に負けて尋ねる私に、シリウスは空を見上げたまま、答えた。


「この国の人々が、幸せでありますように」

 
 迷いなく告げられた真摯な願いに、はっと息を呑む。

 この人は、強く優しくて。

 
 ……なんて悲しい方なんだろう。
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