【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~

最悪のシナリオ

 同時刻――。
 
 ドンッという衝撃と爆音で、私は目覚めた。

「――っ、なに!?」

 ベッドから飛び起き、外の様子を(うかが)う。夜明けの空にゆらりと黒煙が立ち上っていた。

(まさか、暴動!?)
 
 血の気がサッと引く。

(色々と手は打ったもの、大丈夫……。きっと最悪の未来(シナリオ)にはならない)

 忙しないノックの後に、ソニアが入ってくる。いつもの侍女服ではなく、動きやすいパンツスタイルだった。

 私は寝間着を脱ぎ捨て、手早くドレスを身にまとう。着替えを手伝いながら、ソニアが早口で状況を説明した。

「今しがた、シレーネの密偵から情報が入りました。過激派の革命家が市民を扇動し、街で暴動が起きているそうです」

「やっぱり。だけど想定内よ。暴動はすぐに収まるはず」

「それが……」

 ソニアが表情を曇らせる。

「予想以上に、城下は酷い有様になっています」

「……っ! どうして」

「警備が厳重になり、革命家たちは計画を変更したようです。彼らが狙ったのは、アストレア監獄。協力者を潜り込ませ、内部から監獄を破壊。囚人が野に放たれ、街中で暴れているとのこと」

「城下がそんな状況なら、王宮は――」

「かなり混乱しているようです。王族と貴族は宮殿の奥に身を隠し、騎士団が事態の収拾のため奔走しています」

「シリウス殿下は、今どちらに」

「騎士数名に聞いたところ、騎士団は暴動の鎮圧と王族の守護、二手に分かれているようです。城下は騎士団長に任せ、シリウス殿下は精鋭を連れ、メイナード殿下の護衛に向かわれるとのこと」
 
 最悪の事態に、私は息をのむ。
 未来(シナリオ)はたしかに変わった。


 ――悪い方向に。
< 148 / 226 >

この作品をシェア

pagetop