【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「その盗みの力がどれほど凄いのか知らないけれど、奪って返さないのは、人として最低の行いよ」
 
「いやだ、そんな怖い顔でこちらを見ないで、お姉様……」

 努めて冷静に話す私をあざ笑うかのように、ミーティアはあからさまに怯えた表情を浮かべた。『きゃあ、怖いわ』と呟いて両親の背に隠れる。

 
 いい加減にしなさい、と父が厳しく叱った。
 
 ――ミーティアではなく、私を。
 

「エスター、お前の気持ちは分かる。だが、ミーティアに悪気はなかったのだし、返す方法も分からないんだ。許してやりなさい」

「お父様、なぜミーティアをかばうの? 間違えないでください、被害者は私よ。自分のものを取り返す権利があるわ」

「もうこの話は終わりだ。姉なんだから、大人になりなさい」

「ですが!」

「黙るんだ、エスター。諦めろ」
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