【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 小説でハッピーエンドを迎える時期になっても、現実のミーティアとメイナードが結婚する予兆はない。

 
(もうそろそろ、潮時ね)

 
 ここまで悪評が広まった以上、ミーティアが王妃として幸せになる道は、もはや残されていない。

 私が直接手を下さなくても、元妹は勝手に不幸になる。

 
 落ちぶれていく様を見てやろうという意地悪心は、不思議と湧かなかった。

 ただ一点、エスター(わたし)の無実を晴らせないのが心残りだけれど……。

 追い詰められた獣は何をするか分からない。これ以上刺激して正体を見破られては大変だ。


(今日のお茶会が終わったら、怪しまれない程度にミーティアから距離を取りましょう)


 シリウスが正式に王位継承者になれば、メイナードは廃嫡され、僻地(へきち)へ送られる。

 恐らく婚約者であるミーティアと両親も、王都に留まることは出来ないだろう。


 エスターの無実を訴えるのは、それからでも遅くない……。
 
 そんなことを考えながら、私は聖女離宮へ足を踏み入れた。
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