【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 険しい顔をする国王陛下。
 唖然とするメイナード。

 聖女に疑念と失望の眼差しを向ける聴衆。

 もはや王位継承の式典どころではなく、会場は異様な空気に包まれていた。

 しんと静まり返る広間。痛いほどの静寂を、突如、甲高い声が切り裂いた。
 
「うるさい……うるさい、うるさいッ!」
 
 ミーティアがゆらりと立ち上がり、ケタケタ(わら)う。
 
「あたしが盗みの異能持ち? エスターから癒しの力を盗んだ? いいかげんなこと言うなよッ! そんなに言うなら、証拠を見せろよ!」

 もはや聖女の口調を取りつくろう余裕もない。
 
 本性むき出しで叫ぶミーティアに対し、シリウスが「分かった。望み通りにしよう」と淡々と頷いた。

 予想外の返答に、ミーティアが「は……?」と訝しげに呟く。

 シリウスは、背後に控えるライアンへ指示を出した。しばらくして、騎士に体を支えられながら、女性が一人御前に膝をつく。

 行方不明だったシスター・クラーラだ。


「先ほど聖女離宮を捜索したところ、地下牢にて数名の女性および子どもを発見。すぐさま騎士団にて保護いたしました。彼女は地下に幽閉されていた者の一人です」
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