【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 驚いて顔を上げると、ひとりの令嬢が心配そうな顔でこちらを見下ろしてた。
 
 目の前に佇む彼女のあまりの美しさに、俺は思わず息をのんだ。

 
 透けるような白い肌に、うっすら淡紅に色づく頬。
 整った鼻梁に、ふっくらとした唇。

 長いまつげに覆われた大きなエメラルドの瞳。艶やかな栗色の髪が、華奢な肩に、すっと伸びた背中に、豊かな胸元にこぼれ落ちる。

 全てのパーツが位置も大きさも形も、寸分の狂いなく、もっとも美しく見える場所に配置されている。


 まごうことなき、美女。

 ……いや、この世に、ここまで綺麗な人間がいるだろうか?
 
 いっそ、月夜の妖精だと言われた方がしっくりくる。

 彼女は驚いたように目を見開くと、ひくっとわずかに顔を引きつらせた。

「大丈夫そうなので、私はこれで失礼いたします。ではご機嫌よう」

 彼女がくるりときびすを返す。
 
「あっ、あの。待ってくれ――!」
 
 手を伸ばすが、するりと逃げられてしまった。
 
(あの美貌、俺の隣に立つにふさわしい女だ)

 俺は夢中で彼女のあとを追いかけた。
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