【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「ええ、私もです。もしかしたら私達、昔どこかで会ったことがあるのかもしれませんね」
私の言葉にシリウスは数秒考え込むと、やけに真剣な顔で「そうかもしれないな」と呟いた。そして何か思いついたように、花壇へ歩み寄っていく。
しばらくして戻ってきた彼の手には、青いネモフィラの花があった。
「これを君に。先ほど意地悪をしてしまった詫びだ」
そっと手の平に落とされた、小さな水色の花びら。
「綺麗ですね。殿下はこの花、お好きなんですか?」
「ああ、好きだ。――先ほど、女の子を泣かせてしまった話をしただろう?」
「はい。一目惚れで初恋の相手だった、と」
「泣く彼女を前に、俺はどうして良いのか分からず戸惑った。そのとき彼女が『あの花をくれたら、完全に仲直りね』と言って、ネモフィラを指さしたんだ」
私は思わず「――えっ」とかすかな呟きをこぼした。
私の動揺に気付くことなく、シリウス殿下は懐かしそうにネモフィラを眺めつづける。
それから孤児院を出るまで色々と話したけれど、正直、内容はほとんど覚えていなかった。頭の中には、さっきの殿下の言葉がくり返し流れている。
私の言葉にシリウスは数秒考え込むと、やけに真剣な顔で「そうかもしれないな」と呟いた。そして何か思いついたように、花壇へ歩み寄っていく。
しばらくして戻ってきた彼の手には、青いネモフィラの花があった。
「これを君に。先ほど意地悪をしてしまった詫びだ」
そっと手の平に落とされた、小さな水色の花びら。
「綺麗ですね。殿下はこの花、お好きなんですか?」
「ああ、好きだ。――先ほど、女の子を泣かせてしまった話をしただろう?」
「はい。一目惚れで初恋の相手だった、と」
「泣く彼女を前に、俺はどうして良いのか分からず戸惑った。そのとき彼女が『あの花をくれたら、完全に仲直りね』と言って、ネモフィラを指さしたんだ」
私は思わず「――えっ」とかすかな呟きをこぼした。
私の動揺に気付くことなく、シリウス殿下は懐かしそうにネモフィラを眺めつづける。
それから孤児院を出るまで色々と話したけれど、正直、内容はほとんど覚えていなかった。頭の中には、さっきの殿下の言葉がくり返し流れている。