【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 屋敷に戻ってきた私は、食事や入浴を済ませると、早々に自室へ引き上げた。灯りを落としてベッドに潜り込んだものの、眠れそうにない。


 最初に、墓地であの花を見たときから、頭の片隅に何かがひっかかっていた。
 妙な懐かしさ、既視感、そわそわと落ち着かない気持ち。

 もしかしたら、という予感は常にしていた。でも……。
 
 
――『あの花をくれたら、完全に仲直りね』

 
 目をつぶり、時計の針を巻き戻すように過去を順番に思いかえしていく。

 心の奥底にしまい込み、ずっと思い出さないようにしていた『彼』との想い出が蘇る。
 
 頭の中を駆け巡る記憶の波に流され、私の意識は深い眠りへと落ちていった――。
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