ビールで乾杯
 店の前からタクシーに乗って、佑都の部屋に着いた頃には、佑都の酔いは少し覚めているようだった。   
 部屋着に着替えてベッドの中で寄り添った。

「ずっと待ってたの、佑君からのプロポーズ。いつまで待っても何も言ってくれないし、もうその気がないのかと思ってた」
「お前よく言うよ。俺が一緒に住まねえかって言った時、軽くあしらったくせに」

 佑都が不服そうな表情を浮かべている。

「だって今から同棲なんてしたら、絶対婚期逃しちゃうと思ったんだもん」
「俺は、プロポーズのつもりで言ったんだ」
「え?」
「幸せな時間を過ごしてからお前と別れる時、いつもすげえ寂しくなるんだ。このままずっと一緒にいれたらいいのにって……まあそんなこと素面では言えねえけど」

 そんなことをさらりと言ってしまう佑都は、やはりまだかなり酔っているようだ。

「今日みたいな日は特にな……」

 真理の瞳に再び涙が溢れた。

 どうして気付けなかったのだろう。佑都も同じ気持ちだということに。
 こんなにも大切にしてもらっていたのに、何を怖がっていたのだろう。

「佑君……これからは、もっと一緒にいたい」

 別れ話を切り出そうなどと考えてしまったことを心の中で詫びながら言った。

「もっと、ってなんだよ。ずっと、だろ。結婚してくれんじゃねえの?」
「……するよ」

 佑都は真理を抱き寄せると、安堵したように深い溜め息を吐いた。
 時計の針が、零時に近付く。

 しばらく抱き合い、ふと静かになったことに気付くと、佑都は寝息をたてていた。その優しいリズムを微睡みの中で聞いているうちに、真理も眠りに落ちた。

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